『イリヤの空、UFOの夏』の北米お目見え可能性は
質問
『イリヤの空、UFOの夏』のOVAそれに原作小説が近い将来に英訳される可能性はあるのですか。業者でこのシリーズを発売予定しているところはありますか。それから、この作品は『最終兵器彼女』と似ていると思いますか。いくつかの設定が類似していますが。
回答
お気の毒ですが、『イリヤの空、UFOの夏』の原作小説、それにANIMEのほうが北米業者によって配給権が買われたという話は聞きません。原作のほうは知らないのですが、ANIMEのほうは全話に目を通しました。『イリヤの空』が『最終兵器彼女』と結構似通っているという指摘には同意します。
どちらの作品も女子高生がヒロインであり、軍事作戦に投入させられるうちに心身ともにぼろぼろになっていくという話です。『サイカノ』は心痛む悲劇的な物語です。長い時間をかけて登場人物の掘り下げを行うことで、主人公たちに視聴者を共感させていくわけです。『サイカノ』では戦争の現場が具体的に描かれます。暴力と破壊をも司るヒロイン・ちせの姿を視聴者は目撃するわけです。
それに対して、『イリヤの空、UFOの夏』全六巻のOVAは主題が不明瞭であり、掘り下げにも欠けるので全体的につまらない代物に終わっています。何人かの登場人物については掘り下げの意欲をそれなりに感じるものの、どれも中途半端なのです。伊里野の視点から物語を描きたいのか、それとも浅羽の視点なのかがはっきりないので、一貫したカラーを作品全体に保てないでいます。
個々の登場人物に感情移入しがたいところがあって、例えば伊里野が急に健忘症になったりと、時折かなり無理のある盛り上げを挿むために、物語の進みがどこかぎこちなくて、演出臭を強く感じさせてしまうのです。登場人物たちの振る舞いや反応ぶりが時々発言とずれて見えることがあって、劇中人物の内発的な意思による振る舞いというよりは、作り手による演出上のテクニックに感じられるのです。
伊里野の戦いが具体的には全く描かれないので(オープニングには登場しますが、あれは例外)伊里野が耐えているのは何に対してなのかが分からないので、視聴者は彼女に感情移入しがたいのです。彼女は常に超然としている上に、全話の半分において伊里屋については距離を置いた描き方があえてなされているために、ミステリアスで不可解な雰囲気を出そうという作り手側の狙いは分かるのですが、人格を備えた人間どころか物語進行上の小道具としか感じられないのです。
『イリヤの空、UFOの夏』は日本では悲痛なSFロマンスとしてさかんに宣伝されましたが、唯一悲しむべきことに、出来が凡庸なものだったために視聴者に長く残るような感動を残すことはありませんでした。構成の悪さ、ありがちな物語展開の連発に加え、全体のカラーが不明瞭でどういう視聴者を狙ったものなのか分からないのです。
『イリヤの空』を最低最悪の作品と断定するつもりは私にはないのですが、最良のANIMEとは呼びがたいし、TVシリーズ『最終兵器彼女』の質の高さには遠く及ばないものです。『イリヤの空』は短いOVAですし、わが国でも発売される可能性は高いと思います。でも、米国で人気を博したり高評価を受けたりすることもないように思います。
再度念を押しておきますが、私は原作小説については知りません。日本で言う「ライト・ノベル」系小説はわが国にはあまり輸入されていないのです。しかし米国でのラノベ市場の潜在可能性は見過ごせないものがあります。『イリヤ』の訳出可能性はあると思います。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。





コメント
個人的には同意出来てしまうだけにこの回答はきついのう(笑)
ラノベの扱いについては(ジョン氏のあまり乗り気でない反応も含め)ほぼ予想通りで納得。
落語が理解出来ないてぇ感覚からすると、多少日本語や文化がわかってても、ケイオスヘキサ三部作や都市シリーズ、ルナ・ヴァルガー(古いなぁ)なんかを絵でなく文字で理解するのはきつかろうて
前二つは日本人でもきつい人もおるそうだし。
投稿: ニャンニャン丸@携帯 | 2006年9月29日 (金) 18時24分
『イリヤ』の原作って、『最終』よりリリカル(笑)なのに、アニメの尺はそれより短いですからね。無理があったということですか。
『イリア』のアニメは観たことはないのですが、ジョンの評価は予想通りのものでした。
それはそれとして、こういう(両方とも)「痛々しい」話って、世代が古いせいか、どうにも馴染めないなあ。
投稿: さとー | 2006年9月29日 (金) 19時17分
ルナ・ヴァルガーってあんた幾つですか(w
原作的には、サイカノ<イリアですけどね。個人的に。
アニメは評判よくないね>イリア
>米国でのラノベ市場の潜在可能性
↑これはあんまり期待しないほうがよさそうだけどね。
ラノベでの日本語(外来語/カタカナ英語等ふくむ)遊びについては、日本人でも好みが分かれますしね。
だいたい、オノマトペの語感について、海外の方は理解できるのかな?
「なめなめ」とか「びく、びっく」とか・・・
投稿: チャーランポーラン | 2006年9月29日 (金) 20時04分
>米国でのラノベ市場の潜在可能性
これは「”ラノベ的なる物”がアメリカにはあまり無いので未開拓の市場が存在するのでは?」って言ってるんじゃないか?
(原文では The importation of Japanese "lite novels" hasn't exploded in America, but since it's still an exploratory market there may be room in America for the Iriya no Sora novels. とあります。くだけて訳すと"日本製ラノベは大ブームには至っていないけれど、刊行例がないわけではない。今後伸びることがないとは誰にも断言できない。ゆえに『イリヤ』の訳出可能性はそれなりにあるのでは。” 実は、今年9月にラノベ専門の文庫シリーズを始める旨がSeven Seas Entertainment社より発表があったばかりでした。それも踏まえて少し前向きな感じを訳文では狙ったつもりです。 - CC)
投稿: | 2006年9月29日 (金) 22時12分
> ルナ・ヴァルガーってあんた幾つですか(w
「超革中」「あたしの中の・・・」世代のおいらがきましたよ(笑)
> 原作的には、サイカノ<イリアですけどね。個人的に。
おー同士。
> アニメは評判よくないね>イリア
ありゃヒドイっすよ。新海誠に作り直させたいね(笑)
ま、海外向けへ翻訳するとしても最初はイリヤみたいなわかりやすいやつからでしょうね。
> 「なめなめ」とか「びく、びっく」とか・・・
わかつきや青橋まで到達するにはかなりの年月が必要な気がw
投稿: パヴァーヌ | 2006年9月29日 (金) 22時16分
なんか一気に平均年齢が上がった気が(^_^;)
〉あんた幾つ
それが解る旦那も…
朝日ソノラマの緑の背表紙を二つ知っていると言えばお分かりになるかと(笑)
〉超革中
お見それしました。
〉市場
文字や文(あとヲタク的お約束)は辛いでしょうがストーリーを武器にする作品なら多少はいけるかも
まあアニメや漫画ほどは絵を武器に出来ないので辛いのは確かでしょうが
古橋信者としては是非「サムライ・レンズマン」あたりは向こうにも行って欲しいものですが…難しいでしょうなぁ…
投稿: ニャンニャン丸@携帯 | 2006年9月29日 (金) 22時50分
そういや『吸血鬼ハンターD』の北米での売上は好調らしいですね。
まあDの場合、それこそ朝日ソノラマ(緑背表紙時代からですな)ですから、10代向けといっても、今時の萌え萌えラノベとは違って
ある意味ノーマルな展開だし、受け入れやすいのかな?
投稿: 関西人X | 2006年9月30日 (土) 00時33分
世代でゆーと、高千穂遥、新井素子、火浦功、大和真矢、夢枕獏てなラノベの始祖みたいなとこなんで、最近の萌えラノベにはついて行けん。
投稿: | 2006年9月30日 (土) 01時04分
小学生の頃は横溝正史と筒井康孝と小松左京ばっかり、中高大と海外SFばっかり、30過ぎてからラノベ読み始めましたが楽しく読んでます。ラノベは大体一巻ぐらいまでで作者が思いのたけをぶつけ過ぎてしまい、息切れして後が続かない物が多いですが、その分一巻目は密度が濃いものが多くてそれが楽しみです。
投稿: ((((;゜Д゜))) | 2006年10月 1日 (日) 13時54分
日本のアニメをある程度(本気で)理解したいなら、
漫画/ラノベ(小説)/ゲームの有名どころは必須科目だと思いますが、
現状を考えると一人で押さえるのは厳しいですね。(多すぎ)
最近はマイナー?漫画雑誌も増え(只今リュウ読了)最前線の確認が大変。
昔は少なくてよかった。(あ、でもノーラ/キャプテンとかあったか・・・)
ラノベも最近は凄い数なんで、スタージョンの法則の残りの一割を探すのに四苦八苦。
>朝日ソノラマの緑の背表紙を二つ知っていると言えばお分かりになるかと(笑)
緑背表紙のソルジャークイーンが我が家にも・・・
サムライレンズマンの本場での反応は気になりますね。
投稿: | 2006年10月 2日 (月) 01時13分
正直イリヤのアニメは結構残念な結果になっていました。色んな所がカットされてそれを無理やりつなぎ合わせている感じがあったのでちょっと原作ファンの僕としては嫌でしたね。何か僕が監督になった方がまだイイ出来に仕上がりそうですね~。まぁ個人的な意見ですけど。。。
投稿: コバみ | 2006年11月24日 (金) 23時23分