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2006年8月21日 (月)

ANIMEのほうがアメリカンより格好いいのはどうして

質問

アメリカン・アニメーションの番組は『ティーン・タイタンズ』その他を始め、どれもジャパニーズ・アニメーションに比べて絵が貧相なのはどうしてですか。『攻殻機動隊』や『犬夜叉』のほうがずっと魅力的ですし、格好良いのですが。

回答

アメリカン・アニメーションのほとんどには興味もないし、感銘を受けることもない私ですが、アニメーション芸術を尊ぶ人間としては、アメリカン・アニメーションが映像的に貧相であるという発言には同意しかねます。ANIMEはアメリカン・アニメーションとは映像に対する基本姿勢からして異なるものだとは私も思うのですが、アメリカン・アニメーションが映像デザイン的に不十分であるとか不完全であるというわけではないと考えます。

アニメーションについて日本と米国では考え方が異なっていて、それ故にアメリカン・アニメーションとジャパニーズ・アニメーションとでは美意識も異なってきます。アメリカン・アニメーションは基本的にリアリズム志向が薄く、動画技術にこだわるのですが、日本のものはリアルさへの志向が強く、動きよりも見た目の良さに何よりこだわります。

アニメーションは子どもと芸術家向けの映画ジャンルである、という考え方がわが国では根付いています。従来の2Dアニメーションは子ども向けのまんがの場合か、でなければ大衆向けを想定しない作品を作るアーティスト系の人たちのためのジャンルとして使われる場合のどちらかというわけです。

アニメーションが実写にひけをとらないという考え方をする人はわが国にはあまりいません。実写ならリアルなものが描けるし、それなりに歳を積んでいて理性を備えている大衆をたくさん客につけられるけれど、アニメーションとなると、現実とは無縁のものと頭から決め付けられるわけです。(『King of the Hill』のような例外もないではないのですが) 

わが国ではカートゥーンで現実をそのまま描き出すという手法は概ね理解されません。カートゥーンとはファンタジーのことであり、現実から離れた作り物の世界であるべきだとされます。無垢な子どもたちを脅かすことなく実生活についてあれこれ啓蒙する、子どものための娯楽であるべきだ、と。

『パワーパフガールズ』のように極端に様式化されたキャラクター・デザインがされたり、『フリンストーン』や『ジェットソンズ』のように大昔か未来を舞台にしたり、『バッグス・バニー』や『ミッキーマウス』のように人間の代わりに動物を擬人化して出したりすることで、現実とは別世界になるよう工夫されるのがアメリカン・アニメーションです。それに、リアルな背景美術はしばしば嫌われます。ここでもアニメーションを現実と区分けする必要があるというわけです。

アメリカン・アニメーションではリアルとは程遠いキャラクター性格設定やデザインを好むようですが、このリアリティのなさは弱点だとしても、流麗な動画によって補われています。アメリカン・アニメーションはANIMEに較べてずっと動画枚数が多いことで知られています。当然、動きは豊富かつ非常に滑らかで、本当に生きているかのようです。

それから、唇の動きの処理に違いがあります。劇中キャラが喋っているときには、本物の人間がそうであるように、唇の動きと台詞とは同期しています。ANIMEでは口の動きと台詞とがびったり合わないままのことがあります。

ジャパニーズ・アニメーションはリミテッド手法に頼ることが多く、それで安っぽいと非難されることがあります。止め絵だと格好良いものでも、身体の動きはぎこちなかったり不自然だったりすると、見てすぐにわかってしまいます。大抵のアメリカン・アニメーションに較べて、ANIMEは動画枚数が少ないことがほとんどです。

それに、ANIMEでは絵をよく使いまわします。同じ人間の動きを別の場面に流用したり、同じ背景美術を何度も使ったりします。登場人物が喋るときに口元を隠したり画面から外れたり、背中をこちらに向けていたりすることがあります。雰囲気を盛り上げたり、その人物の人柄を印象付けたりする効果があるのですが、口の動きや表情の変化を描く手間を省くための技でもあるわけです。

ANIMEは動画技術の質についてはアメリカン・アニメーションの平均を下回ることが多いのですが、それでもANIMEのほうがUSA産のものより自由度が高いのです。アニメーションは実写よりも映画として根本的に劣っているとわが国では考えられがちですが、日本ではアニメーションは実写に匹敵する映像メディアであると肯定的に受け止められています。それゆえに『パーフェクト・ブルー』のように、アニメーションでつくられた実写と称されることさえある作品が作られるわけです。

アニメーションは非現実的なまんがえいがである、とするのがわが国での理解だとすれば、説得力のある内容をめざすのがジャパニーズ・アニメーションです。キャラクター・デザインは見た目は高度に様式化されてはいても、本当に人格と身体を備えているように視聴者には感じられるよう造形されています。

光と影、衣装や服のデザイン、髪型、体の線、もっともに感じられる舞台設定や背景の細かな描き込み、自動車や食べ物やお店や群集や道路標識や椅子といった細かな生活背景を積み重ねることによって、もうひとつの現実と呼べるような世界を様式美とともに形作っています。彩度の高い色、コントラストの強い色使いはANIMEでは普通に使われます。現実がそうだからです。

一方でアメリカン・アニメーションでは、もっと柔らかめの色暈(ぼか)しの入った色が好まれます。現実とは違うファンタジー世界であることを視聴者にそれとなく伝えているのです。

ジャパニーズ・アニメーションの絵柄のほうが大抵のアメリカン・アニメーションより優れていると決め付けるつもりはありません。それは単に違いの問題です。そして、ふたつのアート様態があるとき、どちらかを贔屓する人は必ずでてくるものです。ANIMEの絵柄は平均的なアメリカン・アニメーションに較べてずっと描き込みが細かく、きびきびしていて凝っていますが、それは説得力のある別世界を描き出すために必要な手法なのです。

アメリカン・アニメーションでは写実的リアリズムはまれですが、それはリアリティへのこだわりがあまりない故です。目指すものがANIMEとは違うのです。それでヴィジュアル・デザインがANIMEのものとは異なるのです。

Why Does Anime Look Better than American Animation?

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コメント

方向性が違うのだから
どちらが上や下という物ではないかと思われます

投稿:   | 2006年8月23日 (水) 03時47分

ディズニーアニメにはそれなりの良さがあるしね
俺が子供の頃はアメリカのアニメが結構放映されてたから結構見てたし
タイニートゥーン、タートルズ、ウォーリーを探せあたりは面白かった。

投稿: kanata | 2006年8月23日 (水) 04時46分

ストーリー展開や科学的なリアリティはかなり無視されますけどね。死人が生き返ったり。

投稿: お茶妖精 | 2006年8月23日 (水) 08時23分

アメリカのアニメーションについては全然と言って良いほど知りません(最後に観たのが『モンスターズインク』)。
しかし、アメコミは時々読みます(大好きな友人がいるのでその影響)。
シュールでカッコ良い絵やストーリーが結構あるんですけどね。
意外と単純明解なスーパーヒーローばかりではないんですよ。
あれをアニメーションにすれば、侮れないものができると思うのですが・・・今までカトゥーンが培ってきた概念を打ち破るのは難しいのかなあ。

投稿: 頭を冷やし中のさとー | 2006年8月23日 (水) 11時14分

海外アニメでも日本がアニメ制作してるものはクオリティが高いです。(タイニートゥーンや数年前に日本で放映してたバットマンでも日本が制作してる回は画も動きもすばらしい)DVD「バットマンザフューチャー蘇ったジョーカー」なんかが良い例です。


投稿: ゴブリン | 2006年8月23日 (水) 14時09分

個人的所感では、アメリカン・アニメーション、カートゥーンと呼ばれるものは、あちらでは「絵本を映像化したもの」といった位置づけなのではないでしょうか。

頭を冷やし中のさとーさんの言を借りると、アメコミのようなシュールで格好いい絵やストーリーのものは実写で表現しようと考える。
そのための情熱やお金、セットを設営する広さがあるからなのかもしれません。
日本の場合はあまりに制約が多すぎて、実写で撮影しようと思っていても超えなければならない壁があまりに多すぎる。
そこでまず情熱が萎え、金を出す側は出資を盾にキャストをごり押し、よほどの知名度が無ければ撮影許可も下ろしてくれない。
ならば絵で表現した方が安価で楽に作品化できる。
そういった一面もジャパニーズ・アニメーションが育った背景にあるのではないでしょうか。

今週から花田少年史が実写映画化されましたが、日本でもアニメよりこちらの方が人気を博しそうな気配ですし、意識の差は実のところ日本もそう変わらないのではないかと感じます。

投稿: Matrox | 2006年8月23日 (水) 14時23分

日本人が作り物にひたすらリアルさ(魂)を込めようとするのは、そのものずばり「アニミズムの国」だからだろうね。
そして魂の存在は感じさせるもので、動いて証明してみせるものではない。もちろんバンクその他はあくまで時間とコストから来る事務的要求だったけれど、それを演出技法として確立し、かつ受容する「感じる文化」があったからこそ、破綻せずずっと続いているのかもしれない。

他方、アメリカ人にとって神はジーザスだけ。基本的にマチズモが絶対的価値観の国であり、作り物はどこまでいっても作り物にすぎない。
けれど同時に、アニメは芸術であるとも認められていたから、時間も資金も潤沢につぎ込まれてフルアニメのまま成長できた、みたいな。

投稿: NANA SEA | 2006年8月23日 (水) 15時34分

サイバーシックスのDVDが日本で発売されます様に。

投稿: 男爵 | 2006年8月23日 (水) 20時06分

いくらアメリカでもリップシンクやってるアニメは
映画だけでしょ?

まあ日本は映画でもやってないけど
AKIRAくらいか

(『かみちゅ!』第一話にありますね - CC)

投稿: | 2006年8月23日 (水) 20時14分

ディズニーの2Dでは、90年代の
「美女と野獣」や「アラジン」とかは人物描写も秀逸で、好きだったんだけどなあ。
ディズニーは、ああいう2Dはもうやらんのかな?
虫や魚はもうそろそろいいよ。

投稿: 関西人X | 2006年8月23日 (水) 20時59分

面白いですねこのサイト
翻訳ネタのサイトは少ないんで重宝してます

投稿: あ | 2006年8月23日 (水) 21時49分

日本人は目で見た風景を二次元が重なり合ったものとして脳が理解するのでセルアニメ向き。
一方アメリカ人は三次元的に脳が理解するので立体を重視するCGアニメ向きだ、という説がありましたね。

日本のゲームはセル風なものから立体CG的なものにシフトしているようですが、アニメがセル的なものでありつづけるのは、やっぱり脳がそうなってるからでしょうかね。

投稿: ひろりん | 2006年8月23日 (水) 23時09分

>いくらアメリカでもリップシンクやってるアニメは
>映画だけでしょ?

横槍だけど週間でテレビ放映されてるカートゥンも
あたりまえの様にリップシンクさせてるよ。
すごい簡素化したキャラデザインでも口パクのバリエーションが10通りくらい余裕で用意されてる。

投稿: | 2006年9月 1日 (金) 22時22分

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